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грозный
月の光が差し込む廃墟。冷たい風が隙間から入り込み、長身の男の首筋をなでる。 寒さに身を震わせることなく、男が本を片手に何かを口の中で唱えると、足元の地面に光が走った。 円形の陣が放つ光に包まれた男が、ふと顔を上げた。 「………」 しばらくの間、立ち止まったまま考えを巡らせ、やがて陣から足を踏み出す。 それと同時に、消えうせる地面の光。 「カーディナルが死んだ」 唐突に発せられた声を受け、奥の階段に腰を下ろしていた、黒短髪の男がこちらを振り向いた。 「あの年増女…しくじったな?」 あざ笑うかのように鼻を鳴らしたその男に、本を持った、黄色い瞳の男が歩み寄る。 「相手は双子と――――」 「あのガキたちが?」 黒短髪の男の脳裏に浮かんだのは、熾団を抜ける際にトップによって殺されかけた2人の少年の姿。 あの瀕死の状態で、どうやって生き延びたのだろう。 怪我が完治するにはまだ早いはず。 心当たりといえば――――唯一、熾団の中で友と呼べる医者がいるのだが…。 最近、その医者の姿を見ていないと考えていると、窓際で空を見上げていた背の低い少年がこちらを向いた。 「…トップ」 全身を紺色のローブでまとった少年。 すっぽりと被ったフードで顔の上半分が隠れたまま、つぶやくように言った。 「あの2人に、そんな力があるとは…思えない」 「アレを持っている以上、不可能ではない」 黄色い瞳の男―――トップが、ぱたんと本を閉じた。 その表紙を見つめ、口を開く。 「加えて、カーディナルの力が誰かに移ったようだ」 「ん?…誰かって?」 気だるそうに肩を押さえる黒短髪の男。 この手の話は、トップにしか分からない。 「移行時に組み替えられたのだろう…私の魔術ではない」 調子を変えることなく、淡々と言葉を並べるトップ。 ――つまりはわかんねぇって事か…―― 階段に寄り掛かり、答えになっていないと心の中でツッコんで。 やや期待はずれではあったが、男は小さく口元に笑みを浮かべた。 「どーするんだ?トップ」 熾団に入ってから、障害というものに嬉々として向かうようになった。 この力さえあれば、自分たちに出来ないことはない――――かつてトップが言っていた言葉が、頭をよぎる。 不敵な笑みを浮かべながら本題を突きつけると、トップは傍にいた小柄な少女の横に座りながら言った。 「先に酉族の本を手に入れるべきだろうな…双子はその後だ」 「なら―――」 「いーや」 僕が行く、と言いかけたローブの少年を、黒短髪の男が声で制した。 「………」 無言で不機嫌そうな表情を向ける少年。 それを見て、くっくっくと喉を鳴らす。 「そんな顔しなさんな」 自嘲じみた笑いを浮かべながら、黒短髪の男が身を起こした。 「ベルイー島は元々、俺の担当地区みたいなもんだ。俺に行かせてくれ」 以前、カーディナルと共に派手に暴れたことがある。 当時の快感を思い出し、震える身を押さえた。 「フロックス―――失敗を許されると思うな」 鋭く念を押したトップの言葉に、細い目を更に細く歪ませる黒短髪の男。 「おーおー…分かってるさ。――――お待ちかねの、酉族の最期だな」 暗い廃墟の中で、光を放つフロックスの右掌。 刻まれた丸い陣に光が走り、握った手を開くと、光の中からクロスボウが生まれる。 鈍く光るクロスボウを持ち、フロックスは狂気を含んだ笑みを浮かべていた。 脅威迫る
20090804 |