C a u t i o n !

微妙に女性向シーンが本当に一部出てきます。
前置きするのも意味がないくらいちょびっとです。


嫌悪を感じる方はご遠慮ください。

























The opening     



 目を開いたのは、誰かの足音がしたからだった。
重い瞼を、本当にゆっくり持ち上げると、不思議なほど赤く染まった空が目に入った。
夜が近いのか、世界の終わりというものが訪れようとしているのか――――それ以上に、上手く頭が働かない。
 狭い視界に入ってきた、たった今まで自分の前にいた姿とは異なる影が近づく。
無防備すぎることは百も承知の上。
 だが、気付けば身体の感覚がない。
腕も、足も、指さえ動かせない。重くて、鉛のようになってしまった身体。
 遂に自分の最期が来る。15年の生涯は、どこの町や村より短い方になるのだろう。
一体自分の身に何が起こったのか――――思い出そうとしたのと同時に、影から声が降って来た。
「歓喜の坊主は瀕死の状態だった」
 この言い回しをするのは、一人しかいない。
男の名前を呼ぼうと、声を、息を絞り出す。
「シェ――――」
「黙れ。喋れる程、お前も軽症じゃねぇだろ」
 影が自分に向かって手を伸ばすのが見えた。
抵抗をしようとしても、やはり腕すら動かない。
 視線を動かすと、男の奥に横たわるひとつの姿。
こちらに背中を向けていて、その顔を見ることは出来ないが――――間違いなく、あいつだ。
 地面に倒れたその姿。恐らく、自分も同じように倒れているのだろう。
生々しく光る、地面に広がった液体。
 それを見て、やっと視界が全て赤いのは、自分の血が目に入っているからなのだと気付いた。
助けて欲しいとは思わない。少なくとも、自分は。
「片割れは俺が生かした」
 その言葉に、視線を男に戻す。
「こんな所で死ぬよりかは良いだろ」
 小さな呟きにも似た言葉の意味を理解するよりも早く、男は何かビンのようなモノを取り出すと、口に中身を含んだ。
そして―――――近づく顔。赤黒くなる視界。わずかに感じる唇の感触。移される液体。
 こくり、と喉を通る感覚が、ヤケに身体に響いた。
離れた男の顔に視点が定まる少し前。
――…ッ!?――
 突如、頭の中に流れ込んでくるいくつもの声。
幾重にも折り重なった記憶の断片が、全て掻きだされるように、それは止まらない。
『歓迎されない子――可哀想に。元々母親の身体が――2人揃って施設の――んなさいね。 もう一人は別のお宅に――最近、小さな盗人集団が――どこに行くの!?――そう、じゃぁ君が―― 僕はディライト――はじめの2人に戻っ――歌姫?――んた、歌うために――お母様から命を受け継 ――俺たちの母親は顔すら見ないで――迷うことはないわ。今すぐにでもそこから手―― この命もろとも――双子はね、見えない絆で繋――か、私の淹れたコーヒー――たしも母親だから ――熾団は変わった。あいつが来たか――僕は人を殺した――逃げるのかい?――死こそが始まり ――それが全てなのだよ――貴方の為なら――わないか?この狂気に満ちた世界の始まりが―― お兄ちゃん…ずっと傍に――所詮、弱い者は生き残れな――アスフォデルの名のもとに―― 熱意の坊主、お前にも、意味があるんだよ』
 頭に響く声。重い頭痛。荒くなる息。気持ち悪く回る世界。
決して良くなっているとはいえない状況ではあるが、それに反するように、感覚が研ぎ澄まされていく。
戻る五感、クリアになる意識、手足が自由に動き、身体の熱が上がっていく。
 先ほどの状態を重体というのなら、きっと今は軽症くらいなのだろう。
死にかけていた自分に、再び生が宿る。
「は…」
 小さく漏れた自分の声。
ヤブではあるが、それでも医者であるこの男が、一体どんな薬を使ったのか。
 いや…薬などではない、人智を越えた何か。
アスフォデルは元々何かの研究をしていた。
それを、この男が協力でもしていたのだろうか。
―――それは違う。この男が熾団のメンバーであるのなら、自分達を助ける意図がわからない。
 何故なら、自分達に瀕死の傷を負わせたのは、熾団のトップであるアスフォデルなのだ。
真相を聞き出そうと身体を起こすが、腕に力が入らない上に、頭痛が強くなってきている。
 キッと視線を男に向けると、何故か顔を引きつらせたヤブ医者は、一歩あとずさって言った。
「俺を恨むなよ…?命がかかってたんぞ…それくらいの変化は喜んで受け入れろ!」
「ま…待て!!」
 変化、という気になる言葉。
回復の代わりに、何かが起こったのだろうか。
 だが、それを詰問するより早く、耐えられないほどの頭痛が襲い、再び地面に転がった。
――お前にも…意味がある…――
 ヤブ医者の走り去る足音を聞きながら、思ったよりも早く、記憶の断片と共に意識が沈んでいった。


俺たち2人がソレに気付いたのは、次に目を開いた時だった。
これこそが、これから起こるいくつもの戦いの引き金であり、俺たちを伝説へと導いた発端。
こうして始まる、尋常ならざる力と伝説を求める、俺たちの物話。




はじまり     



レッドをよろしくお願いします
20080226